シュークリームのいとおしい奇跡

わたしはクリームだった

奇跡の連続によって

あなたというシュー皮に包まれて

シュークリームになるまでは・・

丁寧にこね上げられた生地は

高温のオーブンで焼かれ

水蒸気圧で空洞のあるシューになる

パリッと香ばしく焼き上げられて

クリームを待つ

ひろい空洞に

たっぷりとクリームを注ぎ込まれて

御満悦なあなた

すてきなシューに包み込まれて

しあわせなわたし

ほらほら

今すぐ召し上がれば

パリパリの香ばしい皮と

なめらかなクリームの

絶妙なハーモニーなのよ……

けれど時が経ち……

シューはクリームの水分を吸収して

しっとりとしたシュークリームになってゆく

だが

パリパリでなくなることを嘆くまい

いとおしいシューの芳しい香りも

いとおしいクリームの涙も

ひとつに溶け合って

もう

元のシューにも

元のクリームにも

戻ることはできぬのだから

強い雨がふりそそぐ朝

光も

愛も

ふりそそいでいます∞

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